法人が土地や建物を購入したとき、土地建物そのものの代金以外にも、様々な手数料の支払いがあります。
例えば、不動産業者に支払う仲介手数料とか、固定資産税の精算とか。
おもにこの2つの経理上・税金計算上の取り扱いについてみていきたいと思います。
仲介手数料と固定資産税(未経過精算分)は経費にならない!?
土地や建物を購入した際の費用で、
- 不動産業者に支払った仲介手数料
- 未経過精算分の固定資産税(未経過固定資産税)
は、全部が全部、経費にはなりません。
購入したときの処理としては、仲介手数料も未経過固定資産税も、土地または建物の価格の一部として処理します。
土地と建物は「資産」であるため、経費にはならないのです。
(専門用語で言うと、「仲介手数料も未経過固定資産税も、土地または建物の取得価額になる」と表現します。)
しかし、その価格の一部となった仲介手数料も未経過固定資産税も、建物については、減価償却という処理によって、毎年少しずつ経費になっていきます。
つまり、
- その費用が、土地にかかるものであるときは、半永久的に経費になりません。(その土地を売却したときに、経費になります)
- その費用が、建物にかかるものであるときは、減価償却費の一部として、毎年少しずつ経費になっていきます。
という違いがあります。
仲介手数料についての注意点
不動産業者などに支払う仲介手数料、土地と建物を一括して購入したときは、それぞれ土地部分と建物部分にあん分する必要があります。
領収書などをみても、土地部分がいくらで建物部分がいくらでと、明確に区分されていないときは、土地と建物、それぞれの価格の比率で、その仲介手数料をあん分します。
未経過固定資産税とは?
未経過固定資産税とは、売り主が支払ったその不動産にかかる固定資産税のうち、本来買い主が負担すべき部分の金額のことをいいます。
固定資産税は税金なんだから、資産である取得価額に含めるなんておかしいのでは?経費ではないのか?
きっとそう思われると思います。(私もそう思います)
しかし、この件については、裁判でも争われていて、「売買当事者間で合意に基づき授受された未経過固定資産税等相当額は、あくまでも合意された売買の取引条件の一つであり、その条件を満たさないことには売買取引そのものが完了しないと考えられる」という解釈から、経費ではなく、「不動産の譲渡対価の一部を構成するもの」として、取得価額になるという判断がなされたようです。
あくまで不動産売買における商慣習であるから、税金の支払い(経費)ではなく、仲介手数料と同じ取り扱いですよ、ということにされています。
その他の費用は経費になるの?
仲介手数料と未経過固定資産税は経費にならない(厳密にいうと、すぐには経費にならない)、ということでした。
では、ほかの費用についてはどうでしょう。
経費になるもの
次の費用は、支払ったときに全額経費になります。
- 司法書士の報酬(登記のための手数料)
- 登録免許税
- 収入印紙
- 不動産取得税
不動産取得税については、数カ月後に納税通知書が届くため、経費にできるのは次の年(翌事業年度)になることもあります。
消費税の計算への影響
土地や建物を購入した際の手数料等、消費税の計算についても注意が必要です。
「仕入税額控除(しいれぜいがくこうじょ)」の、対象となるもの・ならないものが混在しています。
仕入税額控除とは、消費税を計算する際の経費みたいなものです。
仕入税額控除の対象であれば、その金額は消費税計算上、差し引くことができ、結果、支払う消費税は安くなります。
- 未経過固定資産税・・・建物部分は、仕入税額控除の対象。土地部分は対象とはなりません(非課税仕入といいます)
- 仲介手数料・・・仕入税額控除の対象。
- 司法書士の報酬・・・仕入税額控除の対象。
- 登録免許税・収入印紙・不動産取得税・・・対象とはなりません。
【編集後記 】
消費税については、細かいことを言い出せばきりがないので、今回は全体像のざっくり解説にとどめました。
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